炸醤面inアメリカ

2001/09/21登録

アメリカ・マジソン在住の中村紳一朗さんから、早くも炸醤麺の画像が到着いたしました。


やっと、炸醤面の店に行って来ました。ちょうど今日の昼食の時間に長く休みが取 れました。炸醤面は夜のメニューなので、昼時に作ってもらえるかどうかわからなかっ たけど、ダメもとで頼んでみました。そうしたら作ってくれるとのこと。感謝感謝で す。

ただ、残念なことに外は雨模様で店の中も暗く、かといってフラッシュをたくには 少し明るいし、よい撮影コンディションではありませんでした。一応、あまりできの よいものではありませんが、お送りさせていただきます。また別の機会がありました ら、きれいなものをお送りしたいと思います。

で、実際の料理の方なのですが、どうやら韓国風と言った方がいいような炸醤面で した。店の名前が「燕京飯店」なので、北京風のものを想像していったのですが、ど うもそうじゃなかったです。炸醤面を頼んだら、即座に小姐は「韓国人か?」と聞い てくるあたり、どうも韓国人はよく食べに来ているのかもしれません。 面は既製の白い面で、そうめんの太いもの、と例えたらいいようなものでした。コ シはあまりありません。

醤はちゃんと炸したものでした。さらっとした感じで、油は控えめ、味は甜麺醤が 元だと思いますが、他の味よりも甘さがちょっと際だっていた感じです。それでもし つこい甘さではありません。具は、猪肉絲・タマネギ・長ネギを炒めたものでした。 北京のもののように生野菜は盛ってありません。

面と醤をぐちゃぐちゃに混ぜて食べました。面があまりしっかりしたものではない ので、醤の少しさっぱりしていることが、かえってバランスをとっているように思え ます。食べるときには面と醤がしっかりと絡みつき、箸を持ち上げるときちょっと重 たく感じる、この感覚はまさに炸醤面そのものです。

中国のそれとはかなり違いましたが、おいしく食べられました。美国の中華街もな いようなところでこれだけのものが食べられれば大満足です。

さて、どうして韓国風になってしまったかという私の勝手な推測ですが、手に入る 面と醤のバランスを考えてなんだと思います。美国では適切な粉が手に入りづらく面 が作れないのでしょう。美国で最も食されている面料理は「Lo Mein」という、炒面 のようなもので、おそらくその面で代用していると思います。手打ちの面の場合はそ れなりに面の「強さ」というものがありますから、油が多少多かろうが、醤が味が強 かろうが、互いに面と醤のバランスが取れるのだと思います。北京で食べたものはま さにそういったものだったと認識しています。しかし、ここではそれなりの面を調達 できないために、さらっとした、ややさっぱり目の醤の韓国風になったのだと思いま す(そういえば日本の炸醤面で、既製の面を使い、まったくそれぞれのバランスを無 視したようなものが結構ありました)。

あと、醤が甜麺醤の甘みを強調した味になっている、ということは一番の商売相手 がアメリカ人である、からだと思っています。アメリカ人の味覚は概ね甘みを好む傾 向にあり、美国の中華料理の多くは、それに従っているといっていいでしょう。当然、 例外もありますが・・・。そんなわけで、ちょっと甘めになっているのだと思います。 話はそれますが(この店ではなく)、「糖酢〜」なんて料理を頼むと驚くほど甘くて、 食べられないことがあります。

ただ、今回の醤、おかしな甘さになっていないのは、化学調味料を味を整える程度 にしか使っていないからだと思います。美国の中華料理(少なくともこの町の)の味 付けを、日本のそれと比べた場合、大きなアドバンテージは化学調味料の使用量が少 ない点だと思えます。美国にはおかしな味の中華もたくさんありますが、日本にいた ときのように食べた後に舌がひりひり麻痺したみたいな感じになることは、そう多く ありません。化学調味料は使わないのがベストですが、いわゆる普通の店にそれを求 めるのは経営のことなどもありますから無理でしょう。だから、味を調えるために使 うのは仕方ないと思います。でも、少なくとも金を取って人に料理を出しているなら、 化学調味料だけに頼った味付けは、ルール違反でしょう。ここら辺は、美国の中華料 理店は美国人でなく、多くは中国人がやっており、日本の中華料理は日本人がやって いることが多い、というあたりの違いでしょうか?

最後に美国ならではと思ったのは、点菜の時、ポークにするかシーフードにするか 聞かれました。炸醤面は豚肉、と思いがちでしょうが、アメリカ人の中にはかなりの 割合でベジタリアンがいること、宗教的な理由でブタが食べられない人がいることを 考慮してだと思います。ベジタリアンも色々いて、動物性蛋白を一切口にしない人も いれば、いわゆる獣肉(ほ乳類や鳥)以外は食べる、という人もいます。だからこう いう料理の、シーフードってのも、ありなんですね。


実は私、アメリカ、韓国に行ったことがありません。 しかし、素麺を太くしたような麺(手延べ麺)に真っ黒な醤の 炸醤麺には日本で何度か出くわしています。これは中国山東省式のようですが、 日本でもこれを置いてる店はハングルのメニューがあったり、 客が殆ど韓国人だったりします。 韓国には海路で山東省から炸醤麺が伝わったということです。

先日の冷凍餃子も、随分わかりやすく材料が表示してあるのが気になっていました。これも豚肉を 食べない人を考慮してのことなのでしょうか?

geminizz@hamakko.or.jp

荒川文治(あらかわ ふみはる)
神奈川県横浜市

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